-スウェーデン語について-

北欧をよく知らない日本の友人によく「スウェーデンって何語なの?英語?」という質問をよく受けます。もちろんスウェーデンではスウェーデン語が話されていますが、日本ではスウェーデン語の認知度が高いとはとてもいえません。

そんなわけで、このページでは日本ではなじみの薄いスウェーデン語について、個人的見地も織り交ぜながらちょっと紹介してみました。個人的にスウェーデン語は(方言や人にもよりますが)かわいらしくて美しい言葉だと思います。毎日スウェーデン語と悪戦苦闘している毎日ですが、習得すれば習得するほどスウェーデン語のおもしろさを発見する日々です。

このページがスウェーデン語に興味のある方の参考に少しでもなれば幸いです!








歴史言語学的見地から見たスウェーデン語









歴史言語学的見地からみたスウェーデン語

スウェーデン語はインド・ヨーロッパ語族から派生するゲルマン語族(厳密に言うと北ゲルマン語族) に属します。 極めて近い親戚はデンマーク語とノルウェー語、またアイスランド語も北ゲルマン語族に属します。 文法的には同じゲルマン系の英語、ドイツ語、オランダ語などとも近い親戚です。

スウェーデン語の起源は、千年以上前バイキングの間で話されていた古代ノルド語とよばれる言葉です。 以後東西2語族にわかれ、現在の主要4言語となりました。 (北東ゲルマン語はスウェーデン語とデンマーク語、北西ゲルマン語はノルウェー語、アイスランド語)。 その他古代ノルド語を起源とする少数言語としてフェロー語(デンマーク領フェロー諸島の言葉。アイスランド語の方言)、 ノルン語(11世紀にバイキングの侵略を受けたイギリス・シェトランド島の言葉、1880年に死語となる) 等があります。

スウェーデン語はどこで話されているか

スウェーデン語人口は約1千万人、スカンジナビア最大の言葉です。 スウェーデン語はスウェーデンではもちろん、 フィンランドの一部の地域でも公用語として使用されています。 スウェーデン語圏のフィンランドには、 フィンランド語は全く話さず母国語としてスウェーデン語を話す人が多数存在しています。

スウェーデン語とその他北欧語について

スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語はお互いにとてもよく似ていて、 各言葉の話者は自国語同士で意思の疎通が出来ます。ただデンマーク語に関しては、 その難解な発音(デンマーク人本人がジョークにするほどその難解さはお墨付き!)から、 普段デンマーク語を聞きなれない中部北部スウェーデン人にとってはかなりわかりにくいようです。 一方南スウェーデン人(スコーネ)にとっては、地理的にデンマークに近く、 デンマークのテレビも普通に見れるだけあって理解に問題はないようです。

なおデンマーク人、ノルウェー人にとってはスウェーデン語理解は問題がないようです。 スウェーデン語は発音的にも文法的にも外国人の習得が一番容易と言われています。

スウェーデン語を勉強するメリットとしては、ある程度までマスターすると、 ノルウェー語やデンマーク語もなんとなくわかるようになる、ということでしょうか。

さて、アイスランド語ですが、これは他のスカンジナビア人には勉強しなければ全くわからないようです。 おもしろいことにアイスランド語は、地理的に他の国から遠く離れているため、 文法等言語構造が千年以上変わっていないそうです。 つまり古代ノルド語を色濃く残しており、 スウェーデン語の原形をアイスランド語に見ることができるようです。 ちなみに活用の難解な恐ろしく難しい言語だと聞いたことがあります。

ちなみにフィンランド語は他の北欧言語とは全く起源が違い、 言語的には主語・述語・動詞という並びが特徴のウラル・アルタイ語族から派生するフィン・ウゴル諸語 に属しています(日本語もウラル・アルタイ語族に属すると考える言語学者もいますが、反対意見多数)。 フィンランド語にもっとも近い親戚にエストニア語があります。 フィン・ウゴル諸語の中でもっともよく知られているハンガリー語もフィンランド語と遠い親戚関係にあります。

スウェーデン語は難しいか(個人的意見)

スウェーデン語が難しいかどうかは個人の主観によって意見がわかれるところなので、 これはあくまで私の個人的意見として読み流して下さい。

まず、過去に英語かドイツ語学習の経験がある人は、 文法的にスウェーデン語の習得はとても簡単だと思います。 特にドイツ語を勉強したことがあれば、スウェーデン語の活用も抵抗なく、 単語も似たものがとっても多いので楽でしょう。英語を勉強したことがある人も、 英語にはない両性・中性名詞の区別やちょっとした活用に最初抵抗があるかもしれませんが 、似た単語も多いし、感覚的に似たところがあるので( 英語を基にしたスウェーデン語の言い回しも多い)、英語の知識はかなり役立つと思います。

また実際問題として日本語―スウェーデン語のお手ごろなよい辞書が存在しないため (あるにはあるが語彙が限られていたり、べらぼうに高かったりする)、 おのずとスウェーデン語対その他の言語の辞書に頼ることになります。 そういった意味では、ドイツ語・英語に限らず、 フランス語やスペイン語等他のメジャーな言語をマスターしていれば大いに役に立つでしょう。

ただヒアリングとなると、スウェーデン語は他の北欧語を除けはどの言葉とも音的には似ていないので、 やはり辛抱強くこつこつとやっていく以外ないでしょう。 書く、読む、話す、聞くの中で私個人が一番苦労している点がやはり「聞く」ことです。

発音はそれほど難解ではありません。 基本的には(例外もある)表記されたとおりに発音すればOKです。 スウェーデン内では様々な方言が入り乱れて話されており、加えて移民もたくさんいるので、 外国人の発音に関して許容範囲は広いと思います。 ただ日本人に苦手なRとL、VとBの発音の違いはしっかりマスターしないと時々わかってくれない事が多いでしょう。 余談ですが、個人的に嫌いなのが、sk、sjなどで始まる発音。 これは日本語表記がとてもできない難しい発音で、私は適当にお茶を濁していますが、 ネイティブのように発音することは私はもう半ばあきらめています。

スウェーデン語のRの発音について

先日テレビで、スウェーデン語のRの発音の地方による違いについての番組をやっていました。おもしろかったので記憶をたよりにここで紹介しようと思います。

スウェーデン語のRの発音は地方により違いがあり、主に2つに分けられます。ひとつは主に中部、北部地方で発音されるRollande Rとよばれるものです。Rollandeとは英語に訳すとRollingとなり、その名のとおり、舌の先を巻いて振動させながら発音します。イタリア語やスペイン語のRと似たような感じですが,これらの言語ほど舌を巻く程度は強くありません。ストックホルムやストックホルムより北はこの発音です。

もうひとつはSkorrande Rと呼ばれるRです。いわゆる喉音と呼ばれる発音です(skorraとは喉音Rで発音する、という意味です。英語ではburr)。この発音は言葉で説明するのがすごく難しいのですが、強いて言えばこれは舌の先を巻くかわりに、喉のちょっと奥を摩擦させるような感じで発音します。よく口に熱いじゃがいもを含んで話しているようだなどといわれます。ドイツ語やフランス語のRと似た感じです。このSkorrande Rはスコーネ地方やブレーキンゲ地方等スウェーデン南部で広く使用されています。

どうして同じ国でこんなにRの発音が違うのでしょうか? 私が先日みたテレビによると、一説には南部のSkorrande Rはフランス語のRの影響を受けているのではないか、ということです。フランス以北の国、ドイツやオランダでもこの喉から発音されるRが使われています。このフランス語の影響は遠くスウェーデン南部まで広がったが,ストックホルムまでは届かなかった、というのです。

真偽の程はわかりませんが、どちらも正しく発音出来ない私としては、しかたなく英語のRを代用して使っています。英語のRを代用してしゃべるとスウェーデン語がどうしても英語なまりになってしまい私としてはとっても不本意なので、ライフワークとしてRの発音マスターに全力を注ごうかな…。(冗談、やりません。どうせ無理だから)

スウェーデン語の方言について

スウェーデンは小国にもかかわらず、他の国々と同様にその方言のバリエーションはとても豊富です。代表的なものには、切れがよく小気味よいイエテボリの方言,朴訥で誠実な印象を受けるノーランドの方言(ちなみにスウェーデンでセールスマンとして成功するなら、このとても人を欺きそうもない雰囲気のノーランドの方言を話すことがとても有利だそうです?),限りなく純粋スウェーデン語に近いといわれるウプサラのスウェーデン語,物事に動じずちょっと頑固でありながら鷹揚なイメージのスコーネ地方の方言,そしてストックホルムの方言,ダーラナ、スモーランド、そしてゴットランドなどなど、例を挙げ出したら切りがない位です。個人的には私はイエテボリの発音が垢抜けた雰囲気で好きです。

そしてさらには、同じ町のなかにも細かい方言があります。ストックホルム中心地を例にとって見ても、セーデルマルム(Södermalm)人とオスターマルム(Östermalm)人では明確な発音の違いがあるそうです(私は違いがまだわからない)。同じ事はスコーネやイエテボリの地方にも言えるようです。

先日このスウェーデン語の方言に関して、私のスウェーデン語の先生から興味深いことを聞きました。彼によれば,スウェーデンの方言は、例えば英国のそれとは対照的にいわゆる社会言語学的な違いがとても希薄だということです。例えば、英国ではその発音で話者がどの社会階層に属するかがわかるとよく言われますが(王族の英語,上流階級の英語、そして労働階級の英語と違いがあるのは有名ですよね),スウェーデンの方言にそれは当てはまりません。方言は純粋に地域的な物であり、同じ地方出身者であれば大臣であろうとトラックの運転手さんであろうとほぼ同じ発音をし、純粋な発音のみではその人がどの階層に属する人かはわからないそうです(もちろん物腰や話す内容等によってある程度見当をつけることが出来る場合もありますが)。

従って、スウェーデンでは純粋に方言による差別はありません。例えばスコーネ人とノーランド人とストックホルム人が同じ職に応募したとしても、その方言の違いのみによってその人が判断されることはないそうです。要するに方言ではなく本人重視、ということです。そのせいかどうかわかりませんが,私の周りにいる地方出身者の友人達は自分の方言を矯正しようとしている人が皆無、かえって方言を自分のルーツとして大切にしているようです。

ただ、近年になって例外が出てきたということです。それはなにかというと、いわゆる「移民」のスウェーデン語です。現在スウェーデンの人口の10パーセントがスウェーデン外の出身者という程スウェーデンは移民を多く受け入れ、現在は両親が外国出身で本人はスウェーデンに生まれ育った二世の時代になっています。現在スウェーデンの移民は出身地によって一つの所に集まって暮らす傾向があり、そこで生まれ育った移民二世によって話されているスウェーデン語は他のどの方言とも違った独特な響きを持っています。例えばストックホルムにはRinkebyという移民が多く住んでいる地域があるのですが、ここで話されるスウェーデン語はRinkebyの方言と呼ばれるほど違った響きを持っています。そしてもちろん彼らにとってはこのスウェーデン語も母国語のひとつなのです。

そして、移民に対するステレオタイプ的な偏見によって(失業率が高いとか、収入が低いとか、ゆえに犯罪が多い、というような偏見)、このRinkeby方言を話す人達に対して、例えば就職に際して差別されることがある、と私のスウェーデン語の先生は指摘していました(ちなみに私のスウェーデン語の先生自身も外国のバックグラウンドを持っています)。このようなRinkeby方言による差別に限らず、移民全般に対する偏見,差別は現在社会問題にもなっていて、テレビ新聞等でよく議論されています。

このような例外的な傾向は、特に差別とつながるためとても気持ちのよいものではありませんが、それでも希望は、スウェーデンではこれを無視するかわりに頻繁にメディアなどがこれについて問題提起をし、討論、議論していることです。近年なって、あえてこの移民のスウェーデン語でラップをし、問題提起をしている移民のバックグラウンドをもつアーティストも支持されています。そして忘れてはいけないのは、もちろんスウェーデンには偏見にとらわれ差別する人がいるのは事実ですが、同時にこういう偏見にとらわれない人達も沢山いる、ということです。

二人称代名詞 - Du革命(Du-Reform)

現在スウェーデン語には、単数二人称代名詞は"du"ひとつしかありません。要するに、英語のyouのように、年齢や社会的地位等に関係なく話者が1対1の場合はお互いに"du"と呼び合います。これは、例えば話す相手の年齢や社会的地位によって親称"Du"と敬称"Sie"を厳格に使い分けるドイツ語などとは対照的です。

しかし一昔前にはスウェーデン語にもこの親称と敬称の違いはあったのです。"Du"は親称として家族や親しい友人、同世代の仲間等に対して使われ、上司や年齢や地位の上の人に対して使われる敬称としては、現在では複数二人称代名詞のみとして使われる"ni"が使われていました。しかし60年代に入り、スウェーデンの平等意識が強まるにつれ、「年齢、社会的地位にかかわらず皆でduと呼び合おう」という、いわゆる"Du革命(Du-reform)"が起こり、始めは多少の居心地の悪さや不都合があったものの、以来単数二人称敬称としての"ni"は急激に消滅していきました。現在では大学の生徒と教授、会社の上司と一般社員、若者と老人、みなDuと呼び合うだけでなく、お互いファーストネームで呼び合っています。スウェーデンの人々の間の平等意識が顕著に現れたとても面白い現象だと思います。

ところが、ここ数年になって、この完全に消滅したと思われていた単数二人称代名詞としての"ni"が少しづつ復活するというおもしろい現象が起こっているそうです。それも10代から20代の若者の間で。彼らのうちの一部は現在も親称と敬称の違いのあるフランス語やドイツ語、イタリア語の影響を受けてか、見知らぬ年配の老人と話す時、敬意の意味をこめて、"ni"の呼びかけを使うそうです。彼らにniと呼ばれる世代は、かつて60年代に敬称"ni"の使用をやめようとがんばった世代の人たちなので、この新しい現象には複雑な思いを抱いているそうです。

言葉の遍歴っておもしろいな、と思います。

それでは、スウェーデン語をやってみようと思っている方々,Lycka till!

参考出典
ヨーロッパ言語学博物館
http://www1.odn.ne.jp/beni/gengo/iefamily/nor_ger.html